気まぐれ社長の犬

―――

はあ…はあ……

久しぶりにこんなに
運動したかも。



「はあ…はあ…あんたなにが中学の頃、だ。めっちゃ強いじゃん」


「そりゃまあ全国大会行ってるからね」


「はあ!?全国!?…だからヒールでもこんなに強かったんだ」


「まあね…でも奏女ちゃんも病気だと思えないくらい強かったよ」


「…奏女は関東大会まで行ったからね。それに試合できるのこれが最後だもん。苦しくても痛くても…全力でやったよ…ゴホッゴホッ」


「大丈夫!?」



私は起き上がって奏女ちゃんの背中をさすった。



「大…丈夫」


「早く帰ろう」



私は電話でタクシーを呼び、奏女ちゃんを乗せた。



「大丈夫?」


「う、ん…もうすぐ…治るから」



奏女ちゃんの息がゆっくりと落ち着いてくる。



「ねえ…私がしたことって、迷惑だった?」



もしかしたらこの発作で奏女ちゃんの寿命がまた縮んだかもしれない。

テニスの試合だって、見てるだけでもどかしくて悲しかったかもしれない。


私がしたことって間違ったただの偽善だったのかな?



「…なわけないでしょ」


「え…?」


「あんたが今日連れてきてくれたから友達と会えた。しかもテニスまでできた。だから奏女は後悔せずに死ねるんだよ!?それをあんたがそんなふうに言わないでよ!!奏女の幸せ否定しないでよ…ゴホッゴホッ」


「大丈夫!?もう話さなくていいから」


「あんたがふざけたこと言うからでしょ!!」


「ごめん……」


「…もし奏女が早く死んでも絶対後悔しないで。誰かに責められても、いつもみたいにふてぶてしく返せばいい。奏女はあんたのおかげで後悔せずに死ねるんだから」


「っ…」


「着きましたよ」



何も言い返せなくなったところで運転手が車を止めた。



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