夕闇の旋律
歌う理由
11月3日

詩音は松葉杖をついて病院内を散歩していた。

一昨日、ついに動くことを許されたのだ。

詩音の行き先はいつも屋上だった。

今日も屋上までもたもたと移動する。

「あれ、詩音?」

途中で詩音の病室へ向かうところだったらしい悠矢と会った。

「もう動いていいのか?」

「うん。動いて良いって」

「良かったじゃん。散歩?」

「そんなとこ。これから屋上に行くの。手伝ってくれる?」

「いいけど、屋上?あんなとこに何しに行くんだよ」

「歌うの。魔法もなにもない、ただの歌だけど」

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