夕闇の旋律
「死ぬ……って、なんの、冗談……」

「冗談じゃなくてね」

悠矢はまた服を着ると詩音に向き合った。

「なんでも、声の魔法力が凄い高いと、この痣が出来てね。まるで生きてるように成長して、それで翼が広がったときに死んでいったらしいよ。今までの人たちは」

言葉が出ない詩音を無視して悠矢は続ける。

「原因不明。死因不明。痣は痣でしかないし、でも痛いとは思わない。何もわからないから、手術のしようもない。痣を剥ぎ取ろうとした人もいたらしいけど、新しく皮膚を張り直しても痣は出てくる」

あくまで、無表情に。

「だから、一部の人は天上の声を神様が欲しがって、天使として天国に連れて行くため、とも言ってるらしいよ」

そこで、初めて悠矢はくすっと笑った。

嘲るように。

今までの悠矢は全て演技だったんじゃないかと思うくらい、冷たい、冷笑。

「どうして?」

詩音は凛とした声で聞いた。

「死にたくないとは、思わないの?」

「……詩音、そっちこそ、どうして」

「どうして?」

「どうして、そんな風に乱暴に俺の中に入ってくるんだよ。逃げろよ。怖がれよ。なんで平然としてられんだよ!」

「だって、何も変わらない。私がそれを知っただけで、何も変わらないもん」

「……は?」

「悠矢くん、もう一ヶ月の付き合いだよ?今さら何を怖がるの?それに、まだ時間はあるんでしょ?」

詩音は無邪気に笑った。

「原因がわからないなら無いのと同じだよ。探せばいいよ。死なない方法」
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