夕闇の旋律
しばらく二人で雪うさぎを眺めているうちに雪が止んだ。

それでもずいぶんと積もり、詩音と悠矢の足跡は無くなっていた。

「なんだかこうしてると、閉じ込められたみたいだね」

「ああ、わかる。なんか動けなくなるんだよな」

白い世界、閉じた世界、柔らかな。

だから二人はすぐには気づかなかった。

本当に一瞬、あまりにも自然だったから。

「今……キス、した?」

不安そうに、詩音が首を傾げる。

悠矢はかぁっと赤くなってマフラーを鼻まで引き上げる。

それを見て詩音は朗らかに笑った。

花のほころぶような、そんな幸せそうな笑顔だった。
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