夕闇の旋律
「一つ、教えてあげる。エンチャントの歌詞はね、効果を絞ることができるんだよ。あの人にだけ魔法がかかるようにって。皆が歌ったその魔法が、たった一人に降り注ぐように……ってね」

「なんでもありかよ」

くっくと悠矢が笑うと詩音はきょとんとして言った。

「なんでもは無理だよ。言ったでしょ?」

「言葉のあやだから気にすんな」

「ああ、そういうこと。あ、そうだ、私魔法学校やめたの」

「……?……何?何て言った?今」

「魔法学校、やめたの。今年から悠矢くんと同じ中学校だよー。制服も届いたの♪」

「な、なんで?詩音は歌も作曲も上手いし、絶対魔法学校にいたほうが、進学とか、将来とか……」

「んー魔法学校にいてもなにも学べないし。それに国に魔女認定されたから進学も将来も安定してる」

「国?魔女認定……?」

「そ。世界にたった3人しかいないんだよー?すごいでしょ」

「すげぇ!……じゃなくて!どういうことだよ、それ?」

「魔法を自在に操れる、魔法の問いかけを聞くことができる、そして、その魔法の問いかけに答えられたことがある……それが魔女とか、魔法使い」

「問いかけ?」

「そう。聞こえてくるの……歌うと……『私の愛し子よ、私の望んだ世界と共にありますか?奇跡を信じて歌えますか?川をくだり、海原に出て、雨になって降るような気の遠くなる道を歩き、迷い、そしてたどりついた私の答えをあなたは導き出せますか?真理を知り、奇跡を使い、そして迷い涙を流している愛し子よ、私のいる場所へ、さあ……』」

「なんか……変な感じがする」

空気が変わったような。

詩音の詠う魔法の問いかけは、部屋を満たして悠矢の中にまで入ってくるようだった。

それは息苦しいほどの重圧で、頭を抱えたくなるほど怖くなる言葉だった。

「ああ、ごめん悠矢くん。これもね、詩に圧縮された魔法が練りこんであってね。初めて聞いたときは私も2日くらい気絶してた」

「ちょ、2日って……」

「さすがだねー悠矢くん。魔力あふれるほどあるおかげでそれ以上入る余地ないから魔法が効きにくいんだよ」

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