【完】甘い恋よりもそばにいて



観覧車前には
ちょっとした列が出来ていた。


どれも子ども連れの家族や
カップルばかりだった。



あたしはあの極限の密室状態で
過ごすというのが
昔からちょっと、
というよりかなり苦手。



4人で乗るのか
2人ずつ乗るのか
よくわからないが



おそらく、
あまり会話は弾まないだろうな


と勝手に想像を広げながら
列に並んだ。



そのとき、
啓の隣にいた由奈さんが
こちらによってきて
軽く耳打ちした。




「莉華さん、
さっき頼んだこと
よろしくお願いしますね」



へっ?なんのこと…?




そのとき、

私たちの順番が回ってきた。




「4人で乗ろーね!」
と由奈さんが言って、
並んでいた順に


観覧車に乗り込むことになった。


なぜか由奈さんが
誘導役を務めて…。



「はい、啓くん乗って」
「……あ、うん…」


由奈さんの姿に
啓も不信感を抱いたのか
少し遅れて返事を返す。



「次莉華さん!」


満面の笑みで言われて
さっきの言葉がこだまする、


頼んだこと…?
頼んだ…こと…



考えながら乗り込んだ。
























そして、
観覧車に乗り込もうとした
先輩をぱっと制止して…




「係員さん…
私たち乗らないんで
扉閉めてください。」






はっきりと、
そう言ったのだ。



「は!?お前何いって…」


先輩若干焦った声。


あたしは
ただ聞き間違いかと思い、
ハッとして
顔を上げたが……






扉は無情にも
閉じられてしまったのだった。








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