利己的ヒーロー
「ちっちっち。お前な、ゲームですら敵を倒したら金が入るのがセオリーだぜ?」

言葉の出ない青年に、自称勇者は追い討ちをかける。

「つーか、剣とか無理。重いし、危ないし。あれで魔王倒すとか無謀にも程があるって、な?」

「知るか! 時代を考えろ! ……大体、何でそんな黒い服を――」

「おーおー、結構イイ服だってのに。言うねぇ?」

にやり、と笑う。

「ほらほら、服が黒いとさ、闇にまぎれるじゃん? そーすっと、物陰からパーン! でオワリな訳さ。超楽勝」

青年は肩を落とし、呆れたように勇者を見やり、

「お前、正々堂々って言葉を知っているのか……?」
と、気力のない声で言う。

「我輩の辞書には可能の2文字しかない」

愉しげに戯れ言を弄しながら、勇者は青年の額に、ごり、と銃口を突きつけた。

「だからつまり俺が言いたいのは――――」

ガチリ。
撃鉄を起こす、凶暴な音。


「――――有り金全部出しやがれ」
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