利己的ヒーロー
惑う姿(魔道士)
[炭鉱のある町/裏通り]


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「はぁ……。ゆーくんたら『ちょっと荒稼ぎしてくるZE☆』とか言って、どこまで行っちゃったのよ……」

からからとウイスキーの氷を揺らしながら、悩ましげに呟く1人がいた。


ここは、小さな街にある寂れたバー。

いつもは常連が2、3人いれば良いほうという経営状況なのだが、今日は違う。

3つしかない個席に昼休みの炭坑夫たちがぎゅうぎゅうになって押し座り、
カウンターには“ある場所”を除いて1つの席に2人も座っているのだ。

だれもかれもがギラギラと目を輝かせ、
だれもかれもがその“ある場所”を異様に熱っぽい視線で見ている。


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