有意義な時間の使い方
「人間は面白いな。この間迎えに来た奴は自分と同じ顔が襲ってくるのを見て錯乱したがな?」
「自分と同じ?て俺と同じ顔の人間が居たってこと?」

不思議と首を傾げれば死神は違う、と言った。
なんでも死神というのは死を告げに行くときに同じ顔をしていく── らしい。なんというか死神自体には顔はなく、その皮を被って死を告げに行って命を刈るのが仕事だそうな。
ドッペルゲンガーの都市伝説もあながち嘘ではないのだろう。遭遇するときが即ち死神とご対面なのだから死んでしまうのも当たり前だ。

「ま……普通に驚くでしょ」
「お前は驚いていないがな?」
「……だね。なんだろ……こういうこともあるんだろうな~なんて思って居たからかな?」

死ぬかもしれない。
明日死ぬかもしれない。
多分── それはない。
そんな矛盾したことをずっと考えていた。まぁ……突然死ぬ、っていわれたら驚くしかないわけだけどまぁ……仕方ない。だって死んだのならあがきようがない。

「お前みたいなのばかりだと楽だな」
「そう?」
「ああ。まぁ……もう一つ魂を刈る間、待って居てくれると助かるが」
「逃げなきゃふらふらしていいってこと?」
「まぁ……そうだな。逃げられないにしても逃げてもいい、その期間が四十九日ってやつだからな」
「へぇ……面白い。ま、いいよ。俺死んだのならもう仕方ないしさ」
「物わかりがいい魂は嫌いじゃないな」
「はははっ、ありがとう」

魂で何が出来るんだろう── って思った。
ふと振り返った瞬間── そこに見覚えのある顔があった。
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