永遠の翼
「この街は、好きですか?」


「・・・ああ」


「わたしも、この街が大好きです。けど、何もかも変わらずにはいられません。楽しいことも、嬉しいことも・・・すべて、変わらずにはいられません」


流暢に語る。


「・・・それでも、この街が好きでいられますか?」


「・・・・・・」


さっきまでの子悪魔的な微笑みとは違い、どこか憂いを込めた表情だった。


「さあな・・・そんなことは分からない」


俺はそう答えた。


「でも・・・もしそうなっても、次の楽しいことや嬉しいことを捜すさ。楽しいことは、一つだけじゃないんだからな」


「そうですか・・・」


新藤が目を閉じる。


今の質問に、何か意味があったのだろうか。


気になったが、訊く気にはなれなかった。


「・・・あんたはまだここにいるのか?」


「はい。この場所はわたしにとって特別な場所ですから」


「そうか・・・」


俺は振り返ることなく、教会を立ち去った。


・・・最後に、一言だけ聞こえた気がした。


―――メリークリスマス、月島宏さん・・・と。




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