120秒の恋
暫く歩いていくと、お目当ての名木が見えてきた。


「わぁ、すごいねぇ」


樹齢300年の名木は圧倒的な存在感でそこにあった。

他のものとは明らかに違う幹の太さ。

枝は天高く空を目指し力強く伸びている。

それとは対照的に花びらのついた細い枝が、くす玉を割ったように放射状に幾つも垂れ下がっていた。

大胆かつ繊細な枝垂れ桜に誰もが魅了されていた。

「300歳っていうから、もっと老木かと思ったけど、立派だね」

「うん。綺麗」


私は目の前の桜と坂井さんを見比べた。

どちらも、力強い中に優しさがあった。

いつもより彼が大きく見えた。

たくましく見えた。

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