クリスマス・ハネムーン【ML】
 




 夜明けが近いものの。

 まだ薄暗いケアンズの砂浜に、僕は、いた。

 今日の天気は、良くないようで。

 日の出が近づくたびに判る、雲の多さにため息が出る。

 まだまだ朝早いと言うことと。

 普段は色鮮やかなケアンズにしては、珍しく。

 今にも降ってきそうな鈍色で寒い天候のために。

 浜には、僕の他に誰も居なかった。




 岩井に、僕と、佐藤が捕らえられ。

 夜明けと共に警官隊が工場に突入して来てから、ほぼ二十四時間経っていた。

 僕達は、あれ以上の傷を負わされることなく。

 ハニーと佐藤は、ほぼ無傷で、帰ることが出来た。

 自称、環境保護団体を名乗り。

 ハニーの誘拐を計画した、首謀者は捕まった。

 けれど。

 実行犯である。

 岩井を中心とした、日本の誘拐斡旋組織は捕まっていない。

 ジョナサン達が、踏み込んだ頃には。

 もう。

 雇い主を見捨てて、さっさと、逃げ出したあとだったんだ。

 岩井が、ケアンズに残っているのか。

 国外に逃亡して、日本に帰ったのか、わからない。

 ただ、判っているのは。

 僕が以前所属していた『組』の中でも。

 かなり、凶悪で強(したた)かな獣が一匹。

 野放しになっているってことだった。

 ………

 そして、気になるハニーの容体は。

 幸いにも。

 午後には、病室で息を吹き返したみたいで。

 消灯寸前。

 自分の入院している病棟から、結局。

 頭を打った挙げ句。

 あちこちの傷を縫うことになって、同じ病院に入院した。

 僕の病室に来ようとしてたけど。

 僕は。

 疲労を理由に、ハニーの面会を断ってしまった。

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