クリスマス・ハネムーン【ML】
「約……束……?」

「そう。
 私と、本気で別れる気になったら……
 私を殺して出て行け、と言うものだ。
 前に……
 ベッドの中で、誓ったろう?」



「ああ……」



 覚えている。




 それは、熱く。



 そして、甘い、情事の最中に。



 苦しいほどの愛と共に吐き出された、言葉。




「あれは、今でも有効だ。
 しかし、新たに一つ。
 付け加えるべきことが、今、増えた」

「……え?」

 それは、なんだ?と、聞けば。

 ハニーは、ようやく、きつく抱きしめていた身体を離して僕の顔を真正面から、見た。

「私を本気で振ってゆくのなら。
 薬を奪って出てゆくような遅い死を、選んでは、ダメだ。
 この胸をお前の手に握った短剣(ナイフ)で突き刺して。
 私の息の音を完全に止めなければ許さない。
 ……私に、残された時間で『毒』を合成されたくなければ」

「ハインリヒ!
 それは……!」

「そう。
 私は、君を脅しているんだよ?
 数千の……もしかしたら、数万になるかもしれない。
 無垢な命を人質に。
 目的の為になら、手段を選ばない。
 ……これが私の本当の姿だよ、螢君。
 これでも私は汚くないと?
 そして、君の答えは?
 私に、なんと返事をしてくれるつもりかな?」

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