クリスマス・ハネムーン【ML】
 うきうきと、湧いていた心が急速に冷えてゆく。

 そんな僕に、何も知らない佐藤が、にこやかにハニーに向かって報告する。

「もともと、霧谷さんは。
 こちらの市長さん主催のクリスマス晩さん会に、招待されていたじゃないですか。
 忙しいのでキャンセルする、とおっしゃってましたけど。
 今夜のパーティに、間にあって良かったです。
 街の有力者とお近づきになれるチャンスですし、もちろん出席しますよね?」

 ……!

『今夜』のクリスマス晩さん会!

 ハニーは『初夜』をすっ飛ばし。

 せまっ苦しい、エコノミーシートに僕を押し込んだのは。

 日本に、僕の大嫌いな『雪』が降るからだ、って言ってくれたのに!

 それも、ウソなのか!?

 仕事で大切なパーティに出るために出発を早めたのか!?



 僕みたいな『男』を『嫁』に貰い。

 しかも、堂々と旅行に連れ出してくれるなんて、普通は出来ない。

 仕事のついでに、とはいえ。

 ハニーの僕に対する愛情って言うヤツは、ひしひしと感じるけれども。

 理性とはまた違った場所で、怒りが、わきあがって来た。

 そんな。

 言葉を失っている僕に、追い打ちをかけるように。

 上機嫌の佐藤が僕の方を向いて、聞いて来た。

「それで、博士。
 お連れの方は、どんな関係の方ですか?」

「彼は、私の」

「同伴の『看護師』ですよ!」



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