クリスマス・ハネムーン【ML】
 上目使いに見るハニーに、僕は、意地悪く言った。

「腹は、立ててるけど。
 怒っては、いない」

「なんだ? それは?」

 僕の言い方に、怪訝な顔をするハニーに、僕は肩をすくめてみせた。

「ハニーの荷物の中には、元々。
 パーティー用の礼服どころか、スーツ一着入って無かった。
 佐藤を見た時も驚いていたし。
 本当に、仕事をする気なんて無かったんだろう?」

「……ああ」

「だったら、僕が自己紹介をしたあたりの時、すぐに。
 仕事をするつもりじゃなかった、と。
 一言だけ、言ってくれれば良かったのに。
 変に黙るから、僕は、腹を立てたんだ」

「……」

 ハニーは黙ったけれども。

 僕は、彼がいつも、とても忙しいのも知ってる。

 年末だって言っても実は。

 この休暇は、無理をして、開けたんじゃないか? と思ってた。

「ハニーが、さっき。
 この旅行を仕事じゃない、と言い切れなかったのは。
 本当は、切羽詰まってて。
 あわよくば。
 遊んでいるうちに、問題の海藻が見つかるといいな、と思ったからだろう?
 なかなかハニーと二人きりになれなくて、腹を立てているのは確かだけど。
 僕だけが君を独占するワケには……」

 ……いかない。

 そう言いながら。

 脱ぎっぱなしのスキューバーの機材を片付けようと。

 立ち上がりかけた僕の腕を。

 ハニーが、ガシッと掴んだ。

「ハニー?」

「螢……君は、本当にそう、思ってるのか?」

「……え?」

 立ち上がりかけた僕の腕を強く引き。

 強引に座らせて、ハニーは言った。

「なんだか、モノ判りが良すぎるな。
 螢君はそんなキャラだったっけ?」

「……は?」

「私の知ってる螢は、もっとわがままで、自分勝手なヤツのはずだ。
 ……もしかして。
 今の言葉も、いつもの気まぐれ……か?
 実は、滅茶苦茶に怒ってるのに、言えなくて。
 後で私の居ない時に、酒でも飲むんじゃないか?」

「は……?
 なんだよ! それが本当なら、僕はどれだけダメなヤツだって言うんだよ!」


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