クリスマス・ハネムーン【ML】
そう、岩井に言われて。
僕は声無く呻いた。
その時僕とは、父親違いの『姉』が病院で、人工呼吸器に繋がれていたんだ。
姉の父親は、彼女が病気だと判った時点で失踪し。
僕の父親は、そもそも、誰か判らない。
シングルマザーだった母親も、僕達の成人を待たずに、僕らを捨てて行ってしまったから。
僕にとって、半分、とは言え。
彼女だけが本当の意味での血の繋がった『家族』だったのに。
病気で死を、間近に控え。
しかも『延命治療は、望まない』と。
今よりマシな状態の時に、彼女本人から確かに聞いたハズだった。
けれども。
僕が、その命を惜しんで、無理やり生かし続けている、命があった。
かなり重症度が進み。
しかも、延命を望まないから。
めったな病院では、受け入れてくれないハズの彼女が。
今、世話になっているのが。
僕の所属していた暴力団の息がたっぷり掛かった、悪徳病院だったんだ。
「お前さんが、裏世界から、足を洗うためには。
自分のカラダのパーツなんかじゃねぇ。
その女の命を、この世から、切り離す覚悟がいるんじゃねぇか?」
憐れみか。
それとも、嘲笑か。
よく判らない表情(かお)をして。
岩井は、微笑んだ。
「ま、どんな仕事をしても程度の差はあれ、辛いことは、あるもんだ。
それを鑑みれば、店の売上げのナンバー・ワンを何度もかっさらい。
客から料金も取りっぱぐれないお前さんは、この職業が、天職かもしれないじゃねぇか?
細かいことは、気にせずに今夜も頑張れ」
言って、取締役は、表向きは、ショー・パブと、ホストクラブの中間みたいな店の準備を始めるために、僕を追い出した。
僕は。
これ以上、誰にも相談することも出来ず。
仕事で。
プライベートで酒を飲む。
……飲んでも、せいぜい。
自分の許容量を超えれば、眠ってしまうだけで。
何の解決も見られない、ままに。
酔いつぶれると見る悪夢に、うなされながら。
僕は声無く呻いた。
その時僕とは、父親違いの『姉』が病院で、人工呼吸器に繋がれていたんだ。
姉の父親は、彼女が病気だと判った時点で失踪し。
僕の父親は、そもそも、誰か判らない。
シングルマザーだった母親も、僕達の成人を待たずに、僕らを捨てて行ってしまったから。
僕にとって、半分、とは言え。
彼女だけが本当の意味での血の繋がった『家族』だったのに。
病気で死を、間近に控え。
しかも『延命治療は、望まない』と。
今よりマシな状態の時に、彼女本人から確かに聞いたハズだった。
けれども。
僕が、その命を惜しんで、無理やり生かし続けている、命があった。
かなり重症度が進み。
しかも、延命を望まないから。
めったな病院では、受け入れてくれないハズの彼女が。
今、世話になっているのが。
僕の所属していた暴力団の息がたっぷり掛かった、悪徳病院だったんだ。
「お前さんが、裏世界から、足を洗うためには。
自分のカラダのパーツなんかじゃねぇ。
その女の命を、この世から、切り離す覚悟がいるんじゃねぇか?」
憐れみか。
それとも、嘲笑か。
よく判らない表情(かお)をして。
岩井は、微笑んだ。
「ま、どんな仕事をしても程度の差はあれ、辛いことは、あるもんだ。
それを鑑みれば、店の売上げのナンバー・ワンを何度もかっさらい。
客から料金も取りっぱぐれないお前さんは、この職業が、天職かもしれないじゃねぇか?
細かいことは、気にせずに今夜も頑張れ」
言って、取締役は、表向きは、ショー・パブと、ホストクラブの中間みたいな店の準備を始めるために、僕を追い出した。
僕は。
これ以上、誰にも相談することも出来ず。
仕事で。
プライベートで酒を飲む。
……飲んでも、せいぜい。
自分の許容量を超えれば、眠ってしまうだけで。
何の解決も見られない、ままに。
酔いつぶれると見る悪夢に、うなされながら。