クリスマス・ハネムーン【ML】
「……佐藤君は、そんなヤツじゃない、と信じてる」

 言って、ハニーは、笑う。

「それに、万が一。
 噂が流れても、放っておけば良い。
 現時点で、私が抜けて困る重要なプロジェクトが三つほど あることを鑑みれば。
 私が、職場の人間に手当たり次第。
 恋やセクハラを目的に迫らない限り。
 誰も、私の好みやプライベートについては、気にしないと思う」

「……ハニーは、他の男に、迫らないんだ?」

 僕の言葉に、ハニーは、莫迦なことを、と鼻を鳴らした。

「男だけじゃない。
 女にも、近づく気は、ない」

 ハニーのデカい手が、僕の頭を撫で、髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜようとし。

 ……気が変わったのか、頬に移動した。

 以前。

 頭を、不用意に撫でようとして。

 僕に、反射的に振り払われたことを思い出したらしい。



 ……もしも、僕が、女の子だったのなら。



 ハニーに、頭を撫でられても。

 きっとおとなしく、いや、もしかしたら、嬉しそうに撫でられたままになってたに違いない。

 けれども。

 本来なら『戦って勝つ』のを『良い』とする、男の本能が。

 これ以上。

 例えハニー相手でも、よしよし、と頭を撫でられて満足するなんて。

 自分を卑下する(さげる)ことを許さなかった。

 大丈夫と軽く受け合ったものの。

 本当は、色々な危険をはらむかもしれない大事なことを。

 佐藤に、自分の思いをはっきり伝える、なんて。

 ハニーの『男らしい』行為が、すごく嬉しい、と思う反面。

 僕のプライドをちくちく刺した。







 ……それでも。

 僕は、ハニーが良かった。

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