パステルカラーの恋模様
そして何かを取り出して、あたしの手の上に置いた。


「あい」


それを見て、あたしはまた涙が溢れてきた。

それは、あの、空色の鍵。




「返す。それ、美園んだから。ね」




啓ちゃんは、へへっと目を細くして笑った。

あたしの大好きな笑顔で。



あたしは嬉しくて嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて、強がる。

啓ちゃんの腕を揺らして、強がる。




「う~…っ…だから…不用心だって言っ……」



その時、腕がぐいっと引っ張られた、と思ったら、啓ちゃんが顔が近づけ、優しくキスをした。

一瞬の出来事に、目を瞑るのも忘れる。




啓ちゃんが真剣な表情で、あたしに言う。



「これから、傍にいてくれる?」


あたしは黙って何度も頷いた。



「部屋にも来てくれる?ポポの散歩、一緒に行ってくれる?」


何度も何度も頷く。


「映画も、遊園地も、本屋さんも、お祭りも、一緒に行ってくれる?」

「うん、うん……」

「花火も、してくれる?肉じゃが作ってくれる?」




当たり前じゃん。

啓ちゃんと一緒なら、何をしても特別な時間になるんだから。




ああ、あたし、これからずっと一番近くで、啓ちゃんのこと見ていられるんだ。

これからは、ずっとずっと傍にいれるんだ。



笑い合えるんだ。

悲しみを分け合えるんだ。

同じ思い出を持てるんだ。



「本当に、本当に、本当?」




啓ちゃんがさっきのあたしを真似てそう言うから、あたしは笑って、


「…啓ちゃん、疑い深い」



とつぶやいた。

すると啓ちゃんは嬉しそうに笑った。




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