パステルカラーの恋模様
「いったたたっ、いった!何?」

「ちょっと、あんまり、そういう事言うのやめてよっ」

「そういう事って?」


きょとんとする啓太。

うう、この表情は、自然じゃない。“わざと”。

しらばっくれる気?!と、あたしは小声で促す。


「あたしは、彼女じゃないの。フリしてるだけなんだよ?いくら契約したからってね、最低限の事しか引き受けるつもりないから!それなのに嫁だとか…何とかって…もう!あ~もう~!」


あたしはあの日キスした時から、啓太の事意識してるっていうのに、啓太がそんな、何てとったらいいのか分からない態度取ってたら、もうどうしていいか分かんないじゃん!


あたしだけ余裕なくして、バカみたいじゃん!


「分ったの?!どうなの?!」

「はいはい、分りましたぁ」

「“はい”は1回!いい?これは恋愛ごっこなの。これで本気になったら芸がないわ。つまり、本気になったらお終いって事!」



そう、終わり。

形上、強引にカップルになっただけだもん。

きっとこれは大袈裟に言えば、“仕事”みたいなもんで…。



しかも、これは別に“義務”じゃないから、いつだって辞めていいんだよ、あたしは。

だけど、仮もあるし、一緒にいて案外楽しいと思ったから、毎日のようにここに来てるってだけ。


いや、言うなれば、来て“あげてる”だけ!


好きになったら、負ける。マシュマロに、負ける。

何だかそんな気がする。



でもね、あたしはこう見えて、真剣に考えてるつもり。

啓太へのこのモヤモヤした気持ちは何なんだろうって。


知りたい。

でも、それをはっきりさせたらいけないような気がしていた。


はっきりさせちゃったら、今までどおりにはいられない気がするから。

それは何だか、すごく寂しくて、つまらない事のような気がするから。


あたしはじっと啓太を見た。

啓太もじっと見つめ返してくる。
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