パステルカラーの恋模様
啓太はきょとんとした顔で「知りたいの?」と首を傾げたので、あたしは、はっとして言い返した。


「結構!別にあんたの家庭事情なんて知っても何の得もないから」

「どっちだよ」


ああ、調子狂う。早く帰ろ。

あたしはくるっと向きを変えてズカズカと歩き出した。

ついてくるマシュマロ。


「ちょっと、ついてこないでくれる?」

「帰るの?」


「あのねぇ、確かに色々お世話になったよ?ありがとう。でも、もう赤の他人なんだし、あたしがどこに行こうと関係ないでしょ。またどこかで会ったらその時はよろしく。もう会うこともないと思うけど」


今のあたしちょっとカッコよかった。

あたしはちょっと悪女っぽく言い放ち、歩き出した。



しかし、



「ねえ」と後ろから呼び止める声。

しつこいな…。


あたしだっていっぱいいっぱいなの。

沢山恥ずかしい思いしたんだから、かっこよく退場させてよ。



あたしは一瞬立ち止まってから、また歩き出した。



すると啓太は淡々とあたしの背中に問いかけた。


「昨日、ベラベラと喋ってた直樹先輩がどうのって、あれ何?」



えっ。

あたしは思わず振り返った。


ちょっと待って?何でこいつが?



奴はあたしが自分の元へ戻ってくる様子を見て、ご満悦の様子でにっと笑った。


『戻ってくると思った』って顔で。



「あんた、何を聞いたの?」


あたしは秘密を握られ、帰るに帰れない状況になってしまった。




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