カモミール・ロマンス

執事とタルトと



夜11時35分。

『ピロリロリー♪』

ベッドに入ってうとうとしていた勇気の携帯が鳴った。

その着信音に勇気はバッと飛び起きる。

それはある人からのメールにだけ鳴る様に設定された曲だったからだ。

勇気は携帯を開き、届いたばかりのメールを読む。


『こんばんは。
今予備校が終わりました。

来週の文化祭だけど、少しだけなら顔出せそうです。

準備とか大変だろうけど、楽しみにしてるから頑張ってね。

沙織』

読み終えた手がプルプルと震え、勇気は声にならない叫びをあげながら両手でガッツポーズをした。

「やばい……超楽しみ。やばい……文化祭やばい」

勇気は携帯を閉じて、また布団に入った。

目を瞑ると沙織のことばかりを考えてしまって、自分でしてるのに照れてしまう。

「……ああ、早く会いたいよ」

小さな呟き。

半月より少し欠けた月がカーテンからほのかな光で照らす。

そんな光の中で勇気はゆっくりと眠りについた。






< 154 / 228 >

この作品をシェア

pagetop