カモミール・ロマンス


放課後の教室に美咲だけが残っていた。

遠くから吹奏楽部の練習の音が、教室に響いていた。

「大丈夫だよね……?

だって私には真央や翔がいるもん。ナオだっていざって時には頼りになるし……ユキだって」

美咲はくしゃくしゃになった手紙を開く。


これ以上木村君達に近づくなブス。
いつも男とばっかり居て、どんだけ男好きなんだよ、気持ち悪いんだよ』

ポタっと手紙に雫が落ちて、水性ペンがじわりと滲んだ。

美咲は手紙をぐしゃっと握る。

力なく背中が震えていた。

「……うっ。なんでこんな」

結んだ小指がチリチリとして美咲は手を広げる。

「……負けない。こんなことに負けてたまるもんか。

真央を……真央を心配させてたまるもんか」

美咲は丸めた手紙を校舎裏の焼却炉に捨てて帰った。

この日から美咲は勇気達と屋上で昼ごはんを取ることを止めた。








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