借金取りに捕らわれて
直ぐに終わらせる気はない。
たっぷり時間を掛けて自分のした過ちを後悔させてやろう。


俺は一人、心の中で黒い残忍な笑みを浮かべた。


それは、ヒロに見せたことがない笑みだ。


これまでも、これからも、決してヒロに見せることはないだろう。










「ヒロ、大丈夫か?」


続けざまヒロの両脇に立っていた男達を殴り倒し、胸元が露になった体を隠すように脱いだスーツをヒロの肩にかけてやる。




ヒロは「はい」と、か細い声で答えた。

小さい声だったが、俺の心を落ち着かせるには十分だった。

まだ怒りは収まらないが、頭の血管が切れる心配はなくなった。




ヒロを立たせるために握った手は怖い思いをしたせいで酷く冷たく、震えていた。




至極当然だ。




それなのに…



ヒロは無理に笑った。



泣きたいくせにそれをこらえて、大丈夫じゃないくせに大丈夫だと無理に振る舞う。




あぁ~なんなんだよ。こいつは。気丈過ぎるだろ!


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