借金取りに捕らわれて

「分かってる。だから…」


秋庭さんは握っていた私の手を下から掴み、ゆっくりと引き寄せ…


「今はこれで我慢する。」


そして、手の甲に口づけを落とした。





その仕草に鼓動が高まる。


唇が触れる甲もとても熱い。


口づけたまま、伏していた長いまつ毛が上がり隠れていた瞳と繋がるように目が合った。






一瞬心臓が止まるかと思った…






手を引きたいのにそれを許さない優しくも強い眼差しに、居心地の悪さを感じて目が泳いでしまう。





私…秋庭さんと、仮ででも付き合っちゃったんだ。

まだ、そんなに自覚はないけれど、居心地が悪いというかこそばゆい…





そんなそわそわする私に、秋庭さんはニコリと微笑んだ。



「仮でも嬉しいよ。
俺の張った罠に落ちてきてくれて。」


呟くように発せられた最後の言葉が聞き取れず聞き返そうかと口を開きかければ、手を解放した秋庭さんがワインを注文するのにウェイターさんを呼んだせいで、その言葉を知る機会は永遠に失われてしまった。



「そう言えば、花ノ衣のあや姉がまた店においでって言ってたよ。それに、凄く心配してた。」