借金取りに捕らわれて
秋庭さんは揺れる私の心を見逃さず、逃げ道を塞ぐように更に言葉を重ねる。



「お前はいつ変わる気なんだ?一年後か?二年後か?いつかいつかなんて思ってるうちはいつになっても変わらない。」


「だからと言って、秋庭さんと仮で付き合ったからって変われる保証なんてないじゃないですか…」


「俺はお前を変わらせる自信はある。」


「なっ…」



相変わらず自信家なんだから。



「自信はあるが、百歩譲って変わらなかったとしよう。それでも、怖がってここでこの提案に乗らないなら、一生一歩も踏み出せないままだ。」




一歩踏み出す…

私は心に積もった重荷を吐き出すように溜め息を吐いた。





「分かりました。
…私、秋庭さんと仮で付き合います。」





そう言った瞬間、私の中で何かが変わった気がした。

何が変わったのか自分のことなのに説明するのは難しいけれど、これが、一歩踏み出したってことなんだと思う。




目を会わせた秋庭さんは凄く嬉しそうに笑みを浮かべた。


「今、凄くヒロにキスしたい。」


なんてことを言うんだ、この人は。


「ダメですよ!こんなところで/////」


私は声を潜め抗議する。


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