借金取りに捕らわれて
また抗議しようとした時、今度は女の人の声がした。


「若、久しぶりだね。」



「おう。」




若?秋庭さんのあだ名かしら?



「どうしたんだい。一人で顔出すなんて珍しい。」



「一人じゃない。今日は…」



秋庭さんは言いながら振り返り私の背中を押した。



「こいつを厨房で雇ってほしいんだ。」



目の前にいたのは桜の花が散りばめられたベージュの着物を着た綺麗な女の人だった。

歳は40代後半といったところだろうか?

この人が所謂ママなのだろう。



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