借金取りに捕らわれて
その人はニコッと笑って明らかに客に見えない私にも変わらず挨拶をしてくれた。



私もニコッと笑って挨拶をすると、なぜか秋庭さんは私を背中に隠した。



秋庭さんの広い背中のせいで、二人の声しか聞こえない。



「綺麗な方をお連れですね。」



綺麗なんて言うから嫌みかとも取れるけど、きっと営業文句なんだろうと思ったのはさっきの挨拶があったからだ。



「だろ?けど、俺の女だから手ぇ出すなよ。」



「女じゃないです!!」



秋庭さんは背中を向けたっきりで、しかも後ろ手に囲われて前にも出ていけなかったから、私はそれだけしか抗議出来なかった。



「無理矢理が過ぎますね。」



「そのうちなるんだから良いんだよ。」


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