あの頃から君は
「こんなのミミズの糞にもならないって」
(・・・ミミズの糞って)
「小巻の寄せ書きも女ばっかじゃん。イケメン女子の異名も伊達じゃないな」

 小巻は総司の言葉に返事をせず、男らしい適当で汚い文字が可愛らしい文字の中に申し訳程度に散らばっているアルバムと総司を交互に見て、困ったように笑った。

「やっぱ総司ってモテるんだ」
「・・・俺にどんな反応を求めてるわけ?」
「いや、事実を述べてるだけで反応は求めてない。んで、総司はここに書いて」

 小巻が指定した場所は、見開きのど真ん中。そこに楕円が書かれていて、左半分に美羽のメッセージが書き込まれている。それがあまりに美羽らしい言葉だったので、総司は思わず笑みをこぼす。それから、総司のアルバムに余白がないと文句を付けながら書き込んでいる小巻を見て、総司の胸がずきりと痛んだ。

(俺は卒業したらどうなるんだろう)
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