唇にキスを、首筋に口づけを



「顔をあげなさい。」



それは、会長の声だった。




俺はその声につられるように顔をあげた。



「今、彼に意見した者に問う。


彼のヴァンパイア駆逐数はいくつだ?」


ピン、そんな風に空気に糸が張ったような感覚。



ザワザワと幹部達の声。




「いくつだと聞いている。」



一際さらに鋭い声が空気を振動させた。



そして一気に静まりかえるこの空間。




「・・・564体、です。」


一人の結界師が答えた。



その数字は正確なものだ。


そしてまた会長が口を開いた。



「彼の駆逐数に勝るものは、この中にはいない。


何十年も狩人をやっているお前たちですら、
彼の駆逐数に勝っていないのだぞ?


彼の意見を通してもいいのではないか?」




シーンと沈黙が痛いくらいだった。



また俺の心臓が早鐘を打ち始める。



「内田くんは両親をとても悲しい形で失っている。


家族のような中川ゆりなさんを守りたいと思う気持ちは痛いほどわかる。


そんな不幸な境遇、職業柄何人もいると、言う者もいるだろう。


だが、彼の実力を超えてから物申せ。」


皆が、彼の言葉に生唾を飲み込むのがわかった。



「俺は、内田くんの意見を通す。」



俺はその言葉に目を見開いた。



会長・・・!!



俺は心がとびあがりそうだった。



そして幹部の方々も渋々、といった様子であったが、

そうですね、と了承してくださった。



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