風見鶏は一体何を見つめるか
いつからだろう。世界(にちじょう)が
つまらないと感じはじめたのは。

今何をしたいというものがわけでもなく、
特に目指す目標があるわけでもない。

 ただただ、のんべんだらりと時間が過ぎ
ていくのも待っているだけ。

そのスタンスを取り続け、はや数年。

 記憶の欠片しか残っていないが、何とか
という『戦隊モノになりたい』とか、『サ
ラリーマンになりたい』と、何も考えず、
どういうものかも知らず、恥も外聞もなく
言えていた過去の自分が羨ましいと思える
くらいだ。

 でも、大学進学を控えた――言わばちょっ
とした社会進出を控えた人種の受験生にと
って、進路が決まらないというのは致命的
な問題だったりするわけだ。

そして、ほら――。こういうときに限って進
路調査なるものがある。

 担任が、のそのそと用紙を配り始める。

――提出期限は今週末まで。

配りながら担任はそう言った。

 一年前ならいざ知らず、今この時期にそ
れが出せないと、恐らく呼び出しを喰らう
ことになるだろう。

 夢もなければ目標もない。そんな僕にと
って、進路調査はまさに絞首刑の台で、提
出期限はそれの階段のようだった。

 僕は本日二度目となるため息をついた。


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