野良夜行
降りてきたのは、髪がちょっと長い青年。
服を着ておらず、上空を見上げると、龍の姿が消えていた。
「服持ってきてないの?」
青年の頭にぽむぽむと、手を置くみよ。
その、なんだ。
気を使ってるけど、お前もさっきからずっと裸だぞ。
着物、俺が持ってるし。
「みよ。みよも裸だよ。人の姿で」
ぼそりと、おかっぱの子が呟いた。
人の姿、というが、今は尾が3つ現れ、白い狐の耳がぴょこりと出ている。
「あ、本当だ。それに尻尾も出てる。もう寝ないとかなぁ」
「歳?」
「もー、ゆかちゃんからすると、お婆ちゃんかもしれないけど、見た目で判断してよ。毛並みだってまだまだ……」
でも、確かに妖怪だとしても、1600年生きてあの肌のハリ、毛並み、運動量。
どれも衰えを感じない。
「お兄ちゃん。みよの事いやらしい目で見ないで」
怯えた瞳に決意が宿った、良い眼をしている。
さっきから、俺、思った事が言葉になってる?
なんだか、この子に自覚ない所で、指摘されてる様な……。