野良夜行
地へと降り立つ、尾長の龍。
その身体には灰と藍色の鱗が並び、金のたてがみは緩やかになびいている。
瞳は凛々しく緋色に輝き、優しい色をしていた。
「妖怪って、どういう事だ?」
いや、目の前のものが現実なのか。
つまり、この龍が妖怪……。
「その人間、みよの知り合い?」
龍の背に乗っていた少女がひょこりと顔を出し、こちらを見下ろす。
絵本などに描かれた座敷童のような、おかっぱ頭に赤が多い着物を着た小さな女の子。
「そう。今のところは良い人間みたいだね」
独り言のようにポツリ、ポツリと喋り、龍の足の後ろへ隠れてしまった。
「はっは~! 敵なら追い返すさ! 唄え、我が楽団員達よ!」
突如、目の前に現れたのは、……クマ?
頭だけに、ピンクのクマの着ぐるみを被り、燕尾の紳士服を着た人。
その光景は異様で、異質なものだった。