野良夜行
「それって記憶が……」
女の子は何かを言おうとした。だが、途中で空を見上げて、口を噤んでしまった。
「お~い、みよ~。あいつら帰ったぞ~」
「~~♪ 思ったより早く済んだな」
どこからともなく、聞こえる声。空からか?
「あ、バカっ!」
何かを確認したのか、一瞬で顔色が曇り、叫んだ。
釣られて上を見ていると、雲のような、長い物がうねり、空を流れている。なにかがあった。
「ダメ、ましろ。人間がいるよ」
その長い物から、3つの声が聞こえる。
1つは楽しそうな少年のような声。
1つは歌っている青年。
そして、1つは優しそうな少女の声。
そしてそれは、近付きつつある。長い物はだんだんと大きくなり……、いや。ゆっくりと下降を始めていた。
「龍……。 なのか?」
「……えぇ、そうです。あなたは信じますか? 妖怪、という者達を」