野良夜行
暖かい背中の上。
ぬるい風を顔に浴びながら、木々を跳び伝う。
「よくついて来る気になりましたね。怖くないの?」
怖い。恐怖はない事はない。
ただ、好奇心が勝ってしまっただけだ。
なぜか。記憶喪失だからか……。
それとも―― 。
「お前らの事が気になるから、かな」
上手く表現をするなら、これが最も近いだろう。
「気になるって、QPに恋しちゃった?」
「QP?」
「クマの着ぐるみの人間のひと」
「するかぁ! 声で男ってわかるわ!」
「なぁーんだ、残念」
月を背に駆ける、白い狐。三本の尾は、それぞれが風に躍らされ、風を切る。
どれくらいの距離を移動したのか、山頂付近に佇む社が見えて来た。
「あそこの神社が、私たちの住処」