ラブソングをもう一度
ー side REI
「ただいま」
この二週間の間、海がバイトに行っている隙に定期的に戻っている、家。
「おかえり」
奥の部屋から、あたしと瓜二つの顔が覗いてくる。
「お姉ちゃん、居たんだ」
「失礼ね。どこほっつき歩いてんの?和泉のとこで寝泊まりしてたの?」
お姉ちゃんが冷蔵庫を開けて、麦茶をコップに注いでくれる。
「ま、そんなとこ」
コップを受け取って、ぶっきらぼうに答える。
あれこれ詮索されたくないのだ。
「嘘ね。あんたも、嘘が上手くなった」
自分と瓜二つの顔に、見つめられるというのも、変な気分だ。
「昨日、和泉、すっごい美人連れて、ホテル街を歩いてたの見たよ」
まったく……、あの男は本当に、ろくでなしだ。
「和泉のとこに、行ってくるね」
立ち上がって、シンクにコップを置く。
ふぅ、とひとつ、溜め息をついて、玄関まで歩く。
「体調、悪くなったらちゃんと病院行ってね」
お姉ちゃんが、靴を履く、あたしの背中越しにそう言って、部屋に入っていった。
8月も、終わりに近付いていた。