「キカイ」の子

「鍬原さん？」


夏美の様子を変に思った冬彦が、彼女に声を掛けた。



「えっ？な、何？」





意表を突かれた夏美が、上擦った声で冬彦に訊いた。






「何か、様子がおかしかったから…どうかした？」






冬彦は心配しながら訊いた。







「いや。な、何でもないの…」






そう照れ笑いしながら、夏美は冬彦から離れていき、教室を出ていった。









冬彦は、彼女が消えた後も、しばらく不思議そうに教室の入り口を見ていたが、勉強を再び始めた。









彼が勉強に集中するまで、クラスメートの話し声の中に、わずかだかセミの鳴き声が混じっていた。