悪い女-悪あがき-
廉は、
指先で髪を触れるようにそっと掴んで
「……やっぱり俺と茜ちゃんは上手くいかないねー?」
寂しそうに笑ってから、
廉の表情は何も映していなくて、
あの適当で緩い表情も貼付けていなくて、
ただ、光に透ける茶色の髪だけがフワフワフワフワ揺れていて、
「安心して?もう茜ちゃんには関わらない。触れない」
さっきまでの感情の篭った言葉が嘘みたいに消えていって、また嘘みたいに知らない顔で、
「じゃーね」
背中を返した廉。
はっきりとした終わりが見えたのは、この時が初めてだったのかもしれない。
────あたしはもう廉には映らない。
この時、あたしが廉に手を伸ばせば、何か変わっていたのか。
そう思う事、それ自体が後悔なんだという事を、この時のあたしはまだ知らない。
