消えてゆく

ふと、早苗はソファから立ち上がり、別の部屋から便箋、封筒、ペンを持って戻って来た。


早苗自身の意思で動いているのか?


早苗の眼に光は無い。


冷たい手でペンのキャップを外し、便箋に文字を書こうとする。


震える手。


手は大きく震え、早苗は押さえる事が出来ない。


文字が震える。


それでも早苗は書こうとする。


突然涙が溢れでた。


枯れ果てたはずの眼から、大粒の涙が止めどなく溢れる。


「チクショウ、チクショウ、チクショウ、チクショウ、チクショウ、チクショウ、チクショウ、チクショウ、チクショウ、チクショウ、チクショウ、チクショウ…」


早苗は両手を何度もテーブルに打ち付けながらそう呟いた。


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