図書館>>>異世界
―――ひとつ目は、色だった。
この世界にはあり得ない、黒と言う色を宿した少女。
そして二つ目は、前髪で顔が隠れていて、表情がうかがえないこと。
口許にもまったく表情が浮かばないので、完全に無表情だったのだ。
小柄なアマネ様とは違い、165センチ程の、スラリとした体躯。 真っ白な肌。
それが黒い髪と相まって、何とも言えない独特の雰囲気を醸し出していた。
騎士団の団長に任命された時、黒い団長服を渡された瞬間、いたく感激したことは、きっとこの後の人生でも忘れないだろう。
許された『黒い』色。
歓喜と感激と畏れが入り交じった、あの感情―――
しかし、ヨルを一目見た瞬間、世界が一変した。それくらいの衝撃をうけた。
深い、深い、闇の色。
それはとても美しく、同時に恐ろしかった。
瞳はその闇に紛れて見えないが、きっとヨルは黒い瞳なのだろう。
不謹慎にも俺は、ヨルの瞳を見てみたいと言う欲求にかられた。