雪割草
 シローはすぐに駆け寄り、香奈を抱え起こした。

「香奈ちゃん逃げろ!

アイツは多分、警察に通報するつもりだ!」

 香奈は首を振りながら、

「やだよ、シロー!一緒に逃げよう!」

 その場から離れようとはしなかった。

「何を言ってるんだ!

俺がリヤカーを引きながら逃げたら、足手まといになる。

君はこのまま逃げて、何も知らなかった振りをしてればいいんだ!」

 真剣な眼差しで説得した。

香奈は目に涙を浮かべ、

「やだよ、そんなの!

ぜったい、ムリ!」

 自力で起き上がると、リヤカーのハンドルを握りしめ、弱々しい力ながらも歩き出そうとした。

「おい!コラッ待て!」

 さっきの男だった。

シローと香奈は、その場に立ちすくんだ。

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