雪割草
 パトカーのドアが開き中から二人組の警官が降り立つと、シローと上田に近付いてきた。

緊張した面持ちで俯くシローの耳元に、硬い足音が聞こえてきた。

脇の下には冷たい汗が流れていた。

目の前に黒い影がそびえ立つと、音はピタリと止んだ。

「あなた達駄目じゃないですか!

車道をリヤカーで歩いては……。

さっき、通報があったんですよ!」

 二人組みの若い方の警官が、シローに向かって警告してきた。

「はい、すいません。

今すぐ、どけますんで……。」

 シローの動揺した声が、少し上擦っていた。

 警官は訝しい顔をして、車に戻ろうと振り返った。

今度は足音が遠のいてゆく。

シローの汗も乾き始めていた。

「ちょっと、待て!」

 もう一人の年配の警官が上田に近付き、俯いた顔を横目で捉えながら、何気なく荷台のブルーシートを捲った。

物でも扱うような、そんな手つきだった。

シローは目を瞑った。

次の瞬間!


美枝子の足首が見えてしまった!



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