雪割草
 二度と足を踏み入れる事はないと思っていた、自分の生まれ故郷に何十年振りに帰って来た。

……人が犯す裏切りという罪に対して、時効というものが存在するのだろうか。

シローは心の片隅に閉じ込めておいた自分の親兄弟の面影を、じっと瞑想しながら思い返していた。

自分の存在なんて、もう忘れているのではないか……。

荷台のブルーシートに目を配り、美枝子の亡骸に疑問を投げかけてみた。

果たして、この旅は美枝子の為だけのものだったのだろうか……。

この道の先には一体何が……。

 シローは気を紛らわせようと歩き出してはみたが、考え込んでいるうちに足取りは次第に重くなっていた。

そのままバス停の小さな小屋を見つけると、ベンチに座り少しだけ、うとうとと眠りについてしまっていた。

四号線は目の前に流れているのに、何故か静寂だけが夜を包み込んでいるのだった……。

 
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