雪割草
第三十三章~帰郷
北国の冬は湿った曇り空が続いてゆくような日々……。
遠い子供の頃の記憶を覗き込んでみると、そんなイメージが蘇ってきた。
゛鏡石゛を過ぎ……。
゛須賀川゛の手前に辿り着いた頃、辺りは薄暗い夜のとばりに囲まれ、それと同時にシローの心の中にも、黒い影が靄を作っていった。
片足を引きずり歩いていると、四号線沿いのガードレールに花束が手向けられているのが目にとまった。
車が通り過ぎる度にヘッドライトで写し出された花束は、大部分が萎れてしまっていて、もう其処には魂さえも消えてしまっているかのように、ひっそりと咲いているのだった。
そんな小さな形だけのお墓に近付くと、シローは静かに目を閉じ手を合わせた……。
東京を旅立ってから、もうどの位日数が過ぎただろうか……。
ニシヤンから貰った軍手はもう擦り切れてしまって、指先には穴が空いていた。
シローは軍手で額の汗を拭った。
しかし、湧いてくるのは疲労からくる汗ではなく、心の靄から流れてくるものであった。
遠い子供の頃の記憶を覗き込んでみると、そんなイメージが蘇ってきた。
゛鏡石゛を過ぎ……。
゛須賀川゛の手前に辿り着いた頃、辺りは薄暗い夜のとばりに囲まれ、それと同時にシローの心の中にも、黒い影が靄を作っていった。
片足を引きずり歩いていると、四号線沿いのガードレールに花束が手向けられているのが目にとまった。
車が通り過ぎる度にヘッドライトで写し出された花束は、大部分が萎れてしまっていて、もう其処には魂さえも消えてしまっているかのように、ひっそりと咲いているのだった。
そんな小さな形だけのお墓に近付くと、シローは静かに目を閉じ手を合わせた……。
東京を旅立ってから、もうどの位日数が過ぎただろうか……。
ニシヤンから貰った軍手はもう擦り切れてしまって、指先には穴が空いていた。
シローは軍手で額の汗を拭った。
しかし、湧いてくるのは疲労からくる汗ではなく、心の靄から流れてくるものであった。