雪割草
 次の日の朝は、肌寒い月日の変わり目となっていた。

武雄は徹夜明けで牛舎から戻って来ると、もう弟の姿は無い事に気が付いた。

コタツの上には、そっと封筒が置いてあった。

その封筒を手に取り中身を見ると、五千円札が一枚入っていた。

何故かしら腕の皮膚には寒気が走った。

 武雄は茶の間のカーテンをスルリと開け、ガラス越しに表の景色を覗いてみた。


初雪が降っていた……。

辺り一面を真っ白に染める雪景色を、しんしんと真新しい雪が下りてきては、更に白く塗りつぶす。

庭先には出来たばかりの二本のレールの様な影が続いていた。


武雄は封筒を仏壇に供え……。



心から小鐘を鳴らした……。

< 194 / 208 >

この作品をシェア

pagetop