雪割草
第三十六章~終焉の地
その頃ーーシローは雪の荒野に紛れていた。

白い綿帽子の様に降り続いていた雪は、いつしか吹雪となり、鉛色の空からその猛威を振るっていた。

轍にタイヤをとられながらも、必死にリヤカーを引き続けるシローの頬には、冷たい風に煽られた粉雪がなぶっては溶けてゆく。

想いを遂げようとする気持ちに死角はなかった。

前に進んで行くだけである。

゛美枝子!もう少しだぞ゛

 心の中で、そう呟いた。

人通りなどは全く無く、車さえも時折走り去るだけの雪に埋もれた県道を、真っすぐ岩代町を目指して歩いた。

視界はやけに狭く、ほんの数メートル先も見えない状態だった。

もう少しで岩代町に入ろうかとしていた……。

ちょうどその時……。

雪の歩道から崖下に片方のタイヤが滑り落ちてしまった。

゛やばい!゛

 とっさに斜めに傾いたリヤカーのハンドルを胸に抱え、シローは踏ん張った。

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