雪割草
「あっ、そうなんですか。それ程人数は多くないんですね」

 またノートを開き、メモを取るようにして、

「それぐらいの人数なら大丈夫ですね。皆さん入居出来ますよ。

どうですか?そっちへ移って来ないですか?ここから近いですし……。」

 と、みんなに問いかけた。

「そう言ったって、俺達家賃なんて払えないしな~」

 チュンサンが竹中の顔色を伺うようにして言った。

「その点なら心配入りません。低所得者の為の生活保護という事になっていますので……。

家賃の方は格安です。
まっ、あってないようなものでしょう……。」

「えー。本当かい?」

 チュンサンは、その言葉に飛びついた。

他の者達も半信半疑ではあったが、興味を持ち始めていた。

しかし、竹中は言い出し難いんですが、と前置きをして次の事を説明した。

「どこの公団住宅でも同じなんですが、部屋の風呂釜は各自で用意しなくてはならないんですよ。

安い物で工費を合わせて二万円位だと思います。

それに、諸経費で二千円掛かりますんで、全部で二万二千円が必要になります。

皆さん、大丈夫でしょうか……。」


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