雪割草
 その夜、シローは美枝子が寝静まった後、全財産のトランプのプラスチックケースを開けてみた。

二千三百五十円しか入っていなかった……。

゛あと二万円か~゛

 シローは溜め息を漏らしていた。


「シローちゃん」

「んっ、どうした?」

 美枝子が起き出してきた。

「シローちゃん、明日から私にも段ボールを運ぶのを手伝わせて」

美枝子のその言葉に、

「いいよ、お前は体が弱いんだから、無理をしないでくれ」

 トランプのケースを背中に隠しながらシローは言った。

「ううん。これは二人の問題だもん。なんとか二人で乗り越えたいの」

 そう哀願する美枝子に、暫く考え込んでから、心の中に真っ直ぐ張ろうとした、緊張の糸を少し曲げるようにして、

「わかったよ。でも、体調が悪くなったらすぐに教えてくれーーーわかったな!」

 シローは美枝子の頭を撫でてあげた。

「うん、わかったよ……。」

 美枝子は微笑んで応えた。


次の日から、二人の共同作業が始まった。

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