雪割草
第十一章~WITH
 その日からの新宿中央公園の住人達は妙に殺気立っていた。

なにせ、一か月で二万二千円という大金を作らなければならないのだ。
しかも、段ボールは一枚二円五十銭に値下がりしたばかりだった。

皆、朝からリヤカーを引っぱり出し、段ボール集めに奔走した。

 シローも今日からは美枝子と共に、忙しい日々を送る事となった。

新宿の街中をシローがハンドルを握り、美枝子が荷台を押しながらリヤカーを搬送した。
路上の至る所にあるゴミ集積場を回っては、段ボールの底に付いている金具の外し方を教えたりして、荷台に積み込んでいった。

 夕方頃になると、次第に二人の息も合い始め、段ボールは荷台の半分近くまで溜まり始めていた。

 日が暮れてからも作業は続き、靖国通りの歩道に立ち止まると、シローは先に帰るようにと美枝子に促した。

しかし、彼女はそれに応じず、仕方なく゛新宿ゴールデン街゛の門を潜り、繁華街へと二人でリヤカーを引いて行く事になっていった。

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