雪割草
第十六章~イルミネーション
 十二支社通りに停めて置いたリヤカーまで辿り着くと、シローは美枝子を荷台に寝かせ、上から毛布を掛けてあげた。

゛頑張れよ、美枝子!すぐ病院に着くからな!゛

 リヤカーのハンドルをギュッと握った。

「取り敢えず新宿だ!新宿の病院を探そう!」

 ニシヤンが荷台の右側を押しながら言った。

「行こう、シローさん!」

 チュンサンは左側を押した。

 夕暮れが迫った空はどんよりと曇り始め、すぐ近くまで降りてきていた。

三人は精一杯の力でリヤカーを運んだ。

美枝子を助ける為に……。

 甲州街道に出ると、更に歯を食いしばり、三人は全力で加速した。

目の前の歩行者を、

「すいません!どいて下さい!」

掻き分け。

猛牛の突進のように走った。

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