雪割草
 新宿の街は、もう既にクリスマスのイルミネーションが飾られていた。

夕暮れ時の群青色に染まる空に、イルミネーションの光が、とても華やかに輝きを放っていた。

シローは、ゆっくりと立ち上がり、美枝子の側へと歩み寄った。

彼女の額に掛かる、ほつれた前髪を指先で戻してあげた。

閉じた瞼に残る、涙の跡を、そっとーー拭いた……。

 安らかに眠る、美枝子の顔は……。

まるで……。


マリア様のようだった……。

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